インスタと子ども理解。 園が作り出すソーシャル。

■選ばれる園の成否を決める
政治も経済もS N Sなくして活動がはじまらない時代です。教育も同じ。特に幼児教育では園の情報発信ツールとして、必要不可欠な存在となりました。
パドマ幼稚園では比較的早くからS N S に取り組んでおり、3年前からはインスタグラム(以下インスタ)も開始。公式インスタと保護者だけに限定した2つのアカウント並列で毎日配信を続けています。フォロワーも1500人を数えるようになりました。
「インスタ映え」ということばが定着したように、若い世代には必携アプリのようで、20代の75%、30代の64%が利用、しかも女性の方の利用率が高いというデータがあります。以前はホームページの補完的存在でしたが、いまではインスタ経由でホームページへアクセスする人が増えており、園児募集や広報ツールとして多くの園で導入されています。インスタのクオリティが「選ばれる園」の成否を決めるといっても過言ではないでしょう。
さらに、面白い現象があります。
当園も新卒採用には苦労をしているのですが、少ないなりに志願してくれる学生のほとんどが、インスタの意外なフォロワーであったこと。幼稚園の雰囲気がわかる、先生たちの活躍ぶりが見られる、と事前のリクルート情報源として活用されていたのです(ですので、当園では意図的に「先生たちのお仕事」シリーズを配信しています)。映像世代ならではの反応です。
インスタは、保護者だけでなく、学生や卒業児家族や、地域社会も巻き込んで、園中心のファンベースをつくるには最適のメディアともいえましょう。

■保育の客観的な観察や評価へ
もうひとつ、インスタには職員が他クラスや他学年に関心や観察の心を向け、幼児理解を深める効果があります。
前述したように当園では全担任が週一回のペースでクラスの様子を発信しているのですが、そこはインスタ世代、開始当初はスナップの羅列だったものが、次第にストーリーやテーマ性を持ったものへと進化しています。クラスの子どもたちの制作の過程を構成したり、クラスあそび(運動)の様子を動画で紹介したり、いわゆるドキュメンテーション的なインスタがたくさん見られるようになりました。
また、本来保護者を対象に発信されているのですが、同じ学年の職員にとっても他クラスの活動を見られるのは、インスタならではの「発見」となります。ことばで伝えるにはむずかしくても、写真であれば理解も早まるでしょう。「そんなふうにやっているのね」「うちのクラスはこうしてみたよ」「他の学年ではこんなこともしていたよ」等々、インスタを題材にして保育の対話が進むのです。
インスタの写真から、「10の姿」や当園の発達指標を観点に見立て合う学年研修もはじまっており、いわゆるフォト・カンファレンスもスタートしました。写真が「他者の目」となって、保育の客観的な観察や評価が生まれ、さらに同僚性(保育者同士が互いに学び合う協働的な関係)の向上につながれば理想です。
ひとつのメディアが、色々な使い手や使われ方を生み出します。出会いや発見、観察や対話を促します。S N Sとは日本語に訳すると「社会的なネットワークを構築するサービス」ですが、まさに園がつくりだすソーシャルとはそのようなしなやかなものをいうのでしょう。

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