総幼研の不易と流行、 世代を超えて受け継がれるために。

■先代会長、最後の舞台
間もなく総幼研40周年記念の園長研修会が開催されます。ちょうど10年前、30周年の2014年には先代会長秋田光茂先生が逝去しています。時の流れに、感慨深いものがあります。
思い出に強く残るのは、同年6月に横浜で開催された園長研修会のことです。当時すでに84歳、体調も万全でない中、押して出かけたのは会長としての責任感であったのでしょう。あるいはこれが最後の舞台という「覚悟」があったのかと思います。全国から集まった園長先生、総勢80名。勢揃いで集合写真を撮った、これが最後の機会となりました(写真)。
私は1984年の総幼研発足時から、先代の旺盛な仕事ぶりに側近で接してきました。まだ自立した非営利の教育活動など珍しい時代です。「全国で思いを同じくする仲間の園のために」先代が粉骨砕身で邁進する姿を尊敬の念を持って見ていました。会員園の皆さんも少なからず先代の真摯な姿に感銘を受け、共に進もうと連帯してくださったのかと思います。
以来20数年、先代は総幼研の先頭に立って牽引し、多くの業績を残しました。「総幼研ハンドブック」も「学びあいの人間教育」も、先代会長が会員園普及のため作り上げた渾身の書物でありました。

■次世代との「協働」
40周年を迎え、総幼研はいま、ひとつの転機を迎えています。
理事会での決議をもとに、小委員会、専門部会などで2年越しの検討を経て、「総幼研ハンドブック」にある指導理念や先生の心得の改訂案が決まり、「学びあいの人間教育」や「しつけカレンダー」などの新版の制作も予定されています。
その改革の真意は何でしょうか。時流適応のねらいもありますが、私がもっともたいせつにしたいのは、先代が強く願っていた総幼研の持続可能性です。一園の実態的な経営が有限的であっても、総幼研とは理念であり実践であり、それは全国どこかの園で永続的に継承されていくという思いです。
総幼研各園で世代交代が進んでいます。次世代の先生方の経験は十分でないとしても、明確に現代の教育観で育ってきています。職員や保護者との距離も近く共感的です。ひとつのことばに対しても読み解き方が異なり、問い直す力があります。何かを創造することを志向しています。
総幼研が、世代を超えて受け継がれるためには、こうした次世代との「協働」が必要です。数十年前に作られたものを現代の視点で読み直し、改良していくことです。総幼研50周年の中心であろう次世代にとって、理解と納得できるものへアップデートするのです。そのために、多様で柔軟性のある、自由度の高い研究会へと脱皮していく必要もあるでしょう。日課活動などを共通の基盤として、各園独自の理念や文化を上積みしていくのです。
私ごとですが、この春、パドマ幼稚園の園長を次世代に交代しました。30代の若い園長が一番最初に取り組んだのは、子どもと職員、保護者のみんなに共有できる「4つのバリュー(価値)」の明文化でした。新園長の理想と姿勢を内外に表すメッセージでした。
総幼研も同じです。40周年を契機として、こうした改革があることには格別の意味があると思うのです。

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