■育ってほしい10の姿
当園でも124 名の年長児が園生活に別れを告げ、巣立っていきました。いよいよ4月からは小学生。私たちの手の届かない場所ですが、総幼研の子どもたちは、次の世界でもいきいきと育ってくれることでしょう。
小学校といえば、この4月から実施される、新しい幼児教育の指針(幼稚園 教育要領、保育所保育指針、幼保連携 型認定こども園教育・保育要領:以下 新指針)でも、幼児教育と小学校との接続が強調されています。このたび「保幼小の接続期に、円滑に学びに向かえる 資質・能力」が園種の区別なく、明確に示されたことは、画期的なことといえるでしょう。
小学校の教員が、幼児教育に通暁しているわけではありません。幼小連携は長くいわれてきましたが、なかなか双方が子どもの育ちを共有することが難しい。小学校の本分は勉強(教科学習指導)ですから、幼児教育があそびを通して、何をはぐくんでいるのか、共通言語がなかったのです。
そして、このたびの新指針で掲げられたのが「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」です。幼児教育の修了に向けて、指導に力を入れるべき点として挙げられています。よくご承知と思いますので、ここでは詳述は避けますが、私たち総幼研としても注目すべき幼児の資質が提起されています。
■総幼研教育の公共性を掘り下げる
たとえば、「10の姿」のひとつ、「協同性」を見てみましょう。新指針には「友達と関わる中で互いの思いや考えを共有し、共通の目的の実現に向けて、考えたり、工夫したり、協力したり、充実感をもってやり遂げるようになる」とあります。
協同性とは単に仲良くするだけではなく、いっしょに何かに取り組み、そのためにそれぞれが力を出し合い、共通のものにしていく意味が込められているのですが、これは、まさしく体育ローテーションや日課活動の目的と符合するのではないでしょうか。
他にも「道徳性・規範意識の芽生え」「思考力の芽生え」「豊かな感性と表現」など総幼研教育に通底する資質が取り上げられており、改めてその先駆性や普遍性に気づかされます。時代が総幼研教育と共振をはじめたといえるのかもしれません。
いえ、ここで手放しに総幼研教育を礼賛したいわけではありません。私たちにも、小学校同様、新指針と共有する幼児の新たな見方・考え方が必要であって、そういうナショナルプログラムから現在の地点を見直す必要があるのではないでしょうか。たとえば、「10の姿」は最近注目される非認知能力を定義づけたものですが、こういった情動の力を活動においてどうはぐくむのか、総幼研としてまだまだ開拓の余地は残されています。
どの総幼研の子どもも、必ず地域の小学校へ上がります。「総幼研の子どもたちは違いますね」「どの子も積極的でケジメがある」「リーダーシップがとれる」といった評価を受けることもしばしばありますが、それを印象論ではなく、明確な資質・能力として捉えていくことが可能となります。それは、総幼研教育を保幼接続の観点から、さらに掘り下げていくことを意味しています。
総幼研は間もなく一般社団法人として再出発します。新たな公益的な法人として、総幼研教育の公共性の追求こそ大きな使命である、と私は考えています。