3年ごとに行われているPISA(学習到達度調査)の2015年度の結果が公表されました。簡単にいえば、一時ゆとり教育のためダウンした日本の子どもの学力は復調傾向にあるということ。「科学的応用力」で2位、「数学的応用力」で5位と、前回よりも順位を上げました。世界トップクラスの学力といっても差し支えないでしょう。
PISAは経済開発協力機構(OECD)が行う国際調査で、知識・技術ではなく、思考力、判断力、表現力といった「応用力」をはかることを指標としています。2020年、導入される教育改革も、多分にこのPISA型学力を意識しているのでしょう。
幼児教育にすぐさまPISA型学力が反映されるとは思いませんが、今回気になったのは唯一前回調査を下回った「読解力」の低下です。専門家は「基礎となる語彙の数が不足している」と警鐘を鳴らしています。日本語のボキャブラリーが少なく、教科書の文章が理解できない子どもが多数いるレベルは、かなり危機的でしょう。
その要因として、少子化によって家族内の大人の会話が減ったこと、活字離れで長文を読む機会が減ったことなど挙げられていますが、その問題の根っこはすでに幼児期から発生しています。
ある調査によると、スマホの普及によって家族との会話は3時間半も減ったといいます。家庭の中で、父も母もスマホ漬けという光景は今や珍しくないのではないでしょうか。あるいはネットでしか文章にふれていないので、短文で平易な文章しか読めない。本はおろか新聞さえ読まず、家では専らうわさ話で盛り上がる? それでは、子どもの問題というより親の問題でしょう。
保護者との会話が多いほど、学力は高いという統計もあります。また、家庭で交わされる父母の会話の質と量が子どもの語彙数に反映することも指摘されています。そのためには、まず親が人間としてどんなことに関心を持ち、意識を凝らすかではないかと思います。
語彙数が飛躍的に伸びる幼児期を読解力の原点として、たいせつに過ごしたいものです。
(追加)
ちなみに、PISAの高得点国についての本「Cleverland」の著者であるルーシー・クレハン氏は、上位国のほとんどは、あそびをベースにした幼児教育で小学校入学準備をさせ、6、7歳から学校でしっかり高いレベルの読み書きと算数を教えていると述べています(エコノミスト誌)。学力の基盤はやはり幼児教育いうのは、すでに世界水準のようです。