ウソはつかない。一流のリーダーは幼稚園で育つ。

 食材偽装問題で世の中が揺れています。
 食の都・大阪で起きたことが残念ですが、それにしても名だたる一流ホテルの社長が次々謝罪会見とは何とも情けない限り。ビジネスの世界の倫理とか信義はどうなってしまったのか。信用失墜です。

 ビジネス指南で有名な東レ経営研究所佐々木常夫さんが、ある雑誌で「リーダーとは幼稚園のときに教わったことをやりとげる人」というコメントを寄せています(DANA11 月号)。
 「私は東レの若手社員に『礼儀正しさ一本でリーダーになれる』と言ってきました。リーダーというのは、幼稚園のときに教えてもらったことがきちんとできる人です。人に会ったら、きちんと挨拶する。みんなと仲よく遊ぶ。仲間はずれをつくらない。ウソはつかない。間違ったことをしたら、勇気をもってごめんなさいと言う……でも、残念なことにこういうことを愚直なまでできる社会人はなかなかいません」
礼儀正しさとは、マナーとかエチケットをいっているのではありません。その本質は相手を尊重し、たいせつにすることで、それがないと社会も組織も、家庭だってうまく運営されません。今回の偽装事件は、まずその礼儀の大本を欠いているといわざるを得ません。

 佐々木さんが指摘するように、幼稚園の肝心とは「人の道」をきちんと伝えることです。道徳の授業があるのではない。幼稚園生活のすべてにおいて、友だちや先生との関係を通して、挨拶、礼儀をはじめ、慈愛、信頼、勇気などを体得していくのです。すぐ形にはなりません。しかし、その価値は佐々木さんの言う通り一生ものです。小さな体験が生涯の大きな人格の基礎をつくっていくのです。

 幼児教育の世界にも、英語や体育がブームとなっています。活動としてその重要性は認めますが、幼稚園の教育が肝心の「人の道」を棚上げして、個別の能力開発に走るようなことがあってはいけません。幼稚園という小さな社会をつないでいるのも、挨拶であったり、礼儀であったりするのですから。

 リーダーは会社や組織だけに限りません。家庭で、地域で、よき大人であるように、リーダーとしてまず私たちがその模範を示していきましょう。ひとつずつ、確実に。

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