園の先生方へ。先生方に学期始めに目標をたずねたら、自らのことばやことばがけについての抱負が少なくありません。
「話をするときは自分の中できちんと整理をしてから話す」
「話をする前に、相手の立場になって考えることを意識していく」
「〈問いかけ上手〉を意識して、多くの先生方と対話していく」
確かに教師にとって、ことばはいのちと等価です。欠いてはならない心がけです。
仏教でも昔からことばの暴力について戒めを説いてきました。十不善という「してはならない戒め」にも「殺すな」「盗むな」と並んで、ことばの悪行についても掲げられています。曰く「うそをつくな(妄語)」「二枚舌を使うな(両舌)」「荒々しいことばを使うな(悪口)」「筋の通らないことばをつかうな(綺語)」など、それだけことばが人間の人格や品位にかかわる重大な術であることを承知していたのでしょう。
しかし、仏教が本当に伝えたいことは、ことばの禁止それ自体ではありません。たいせつなことは「すぐれた自己を完成させるために」ことばをいかに使うか、なのです。
佐々木閑さんの好著「日々是修行」(ちくま新書)にはこう書かれています。
「今現在、粗暴な心に支配されている人でも、やさしくて正しいことばを使うよう努力し続ければ、やがて自分の中に正しい心が生まれてくる」のだから、「自分のことばを自分でコントロールすることが、そのまま修行になる」
テレビのワイドショーのような、右から左へ抜けるような軽いことばが横行しています。言ったもの勝ちの風潮は、ことばの前で熟慮する、再考する、という謙虚さを奪いつつあります。たいせつな相手に想いを寄せ、慎重にまた誠実にことばを紡ぎだす。ことば数よりも、たいせつなものはことばの知性なのです。
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