■働き方や知の評価軸の転換
幼児教育の経営でも「時流予測」の重要性がいわれるようになりました。昔から、英語だパソコンだと流行はありましたが、少子化が深刻化するいま、それは単に流行り物ではなく、社会の動向や風潮を読むことを意味しています。最近は「AIに負けない子どもを育てる」というフレーズが定着しましたが、これもテクノロジーの時流に対したあり方でしょう。
教育、なかんずく人間性の基礎基本をはぐくむ幼少期の教育に、そういった社会や時代の変化を汲み取る事にためらいがない訳ではありません。民間の幼児塾、受験塾と違って、公的な教育機関として、最も本質的な実践を担うことが園教育の使命であって、流行りすたりのある人気に左右されるものであってはならないからです。
それを十分認識した上で、いま、私たちが直面している「時流予測」とは何か、私見ですが3つ考えられると思います。
ひとつは、加速度的な少子化です。2022年は80万を下回るといわれる出生数の激減は、もはや歯止めが効かないように見えます。これは、将来の15歳から64歳までの労働力人口の減少を意味し、生産力も消費力も縮んできます。「異次元の少子化対策」に期待はできるのでしょうか。
2つ目は、働き方や知の評価軸が転換されたことです。近頃はDX(デジタル・トランスフォーメーション)はすっかり人口に膾炙しましたが、労働力人口の不足を補うにはAIやテクノロジーの力を借りるほかありません。働き方もコロナ禍ですっかり変わりましたが、それは単に効率面や生活面だけでなく、仕事のあり方や知の評価軸にもかかわってきています。
こたえのない時代、知識や技術を持っているだけでは限界があります。複雑で曖昧で不確実な社会において、いかに問題を発見し解決できるか、異なる他者と協働できるか、そういったコンピテンシーが今後の社会における要件なのでしょう。知識だけではなく、スキル、さらに態度を含んだ人間の全体的な資質・能力が必要とされています。
■「教える」から「学び」へ
そして3つ目が学びの環境変化です。2020年は教育改革の本丸の年でした。コロナですっかり霞んでしまった感はありますが、ギガスクールが前倒しで
普及して、試行錯誤はあったにせよオンライン授業が実行されました。また、学習指導要領の改訂、大学の入学共通テスト、少し前の幼保の3法令の改訂
や、幼保小の架け橋プロジェクトなど、幼児教育から大学教育まで横断的な知のあり方を促進してきたのです。
知識や情報の量であれば、タブレットがあれば十分事足ります。これらが意味することは「教える」時代から「学び」の時代へと転換が進み、幼児教育であっても、子ども自身の主体性や思考力、社会性の育成が課題となってきたことなのです。
1月20日に、パドマ幼稚園で久しぶりの公開保育を開催しました。詳しくは本紙に譲りますが、プリント教材を使った、これまで見ることのなかった
様々な取り組みがありました。これまでの型の教育をベースとしながら、新たに個々の主体性の育ちを目指す保育のトライアルでした。その評価は見学
された園長先生方のお声に任せますが、なぜそのような活動へといたったのか、「時流予測」からは新しい園教育の役割が読み取れるように考えるのです。