園とは集団生活の規範となるものですが、集団とは単に人と人が寄せ集まったものではありません。 集団が仲間の連帯感を強め、協調していくには、たいせつな絆となるもの、共鳴、共感、共体験が必要です。
明治大学の石川幹人さんの「人は感情によって進化した」 という本には、 その3つこそ人類が進化する上で欠かせない働きであったと、その起源について述べています。共鳴、共感、共体験です。 私なりに要約してみました。
まず「共鳴」これは特定の誰かのとの間で起こる共振現象です。お友だちが好き、先生を信頼しているなど、愛情や信頼感があると、 互いのよろこびを共振させるはたらきがあります。先生がうれしいと、私もうれしい、という感情です。
つぎに「共感」多くの誰かとの間で起こる同調現象です。日課活動で周りのみんなが楽しそうにしていると、自分もなんだか楽しくなってしまう。個別というより、集団で互いを真似ながら同調の幅を深めていくような経験です。
そして「共体験」これは集団内で共通の価値を共有して起きる現象です。例えば運動会の組体操のように、一人一人ががんばって、みんなでやり遂げる喜びを言います。お友だちが何かを達成できた。そのお友だちが楽しくなって、つぎに自分にも同じことが起きて、楽しくなった。価値を共有した、楽しさの連鎖です。幼稚園の課題活動がそれに当たります。
人類は、最初から連帯する仲間集団であったわけではありません。子どもたちのクラス集団がそうであるように、長い時間をかけてさまざまな経験を共有しながら、だんだんと共同体へと進化していきます。もちろん、集団には当初は不和もあれば対立や衝突もある。それが互いを尊重し合う仲間集団になるには、集団の関係に快適さや心地よさが作用しなくてはなりません。それを石川さんは、「肯定的感情」つまり「楽しさ」だと言います。
肯定的な感情は、個人の欲求を充足させる以外に、同時に社会的な役割も果たします。集団の仲間関係が楽しければ、社会に対する基本的な信頼感も育ちます。他者に対し積極的なコミュニケーションもできるようになります。
2学期の幼稚園・保育園は、たくさんの行事でいっぱいです。1学期で育んだ仲間関係を、今度はさまざまな経験(行事)を共有することで、子どもたちの確かな肯定的感情を育てていきたいものです。